前回は、ハーバード大学ジェフ・リクトマン教授の「プレゼンのおきて」でした。これは、「気を散らさないように」「単純に」といった大まかな精神論みたいなものを説いたものでした。
今回から、スタンフォード大学のスー・マコーネル教授の「Designing effective scientific presentations(効果的な科学プレゼンテーションをデザインする)」というiBiologyで公開されているビデオの内容について考えてみたいと思います。マコーネル教授というと、大脳皮質発生の研究に興味ある方ならお馴染みだと思いますが、有名な神経発生学者です。
この「Designing effective scientific presentations」の特徴は、詳細で具体的であるということです。そして、実践的で、普段あまり考えたことのないことにまで言及しているので、示唆的であるということでしょうか。すべて取り入れる必要はないですが、改めて考えてみる材料になると思います。
40分程度のそれほど長くないビデオなのですが、内容が盛り沢山なので、1回だけでは扱えません。3回に分けて、私のコメントを付けて紹介します。
前の数字はビデオ中の時間です。
0:00 イントロダクション
情報量が少ない簡単なスライドづくり。これは、前回のリクトマンのおきてと重複します。
3:05 スライドのフォントについて
スライドのフォントは何にするべきか?
Sans Serifフォント(Arialなど)は、Serifフォント(Times New RomanやCourier)より、早く読めるという心理物理学(精神物理学)的な研究があるようです。Sans Serifフォントを使うべき。
実際、Serifフォントを使っている人というのは、あまり見かけません。このブログが、文献を引用しながら説明しています。
Which Are More Legible: Serif or Sans Serif Typefaces? | Alex Poole
(上からArial, Times New Roman, Courier)
フォントは18ポイントから36ポイントまで。
それ以上、大きなフォントは使わない。
14ポイントは、下の方に文献を示す時のように、積極的に読ませたくない場合に利用できる。
大文字だけのタイトル、文章、単語は使わない。単語ひとつずつの最初を大文字にするのも読みにくい。大文字は読みにくいことに留意すること。
5:29 スライドの色
ロゴなどは入れない。
大きな部屋では、暗い背景に明るい文字を使うのが効果的(例、青い背景に白い文字)。
小さな部屋では、明るい背景に暗い文字(例、白い背景に黒い文字)が効果的。眠くならない。ただし、蛍光写真などを多く使う場合は、暗い背景で統一するのがよい。
赤背景、緑文字など、不快な組み合わせは絶対避ける。
見にくい同系列の色に注意。
8:50 スライドのレイアウト
それぞれのスライドにヘディング(タイトル)を置くのはよいだろう。
スライドの文章は、2行まで。
引用の場合は全部書いてもよいが、できるだけ短く言い換える。
1....
2....
3..... というリスト形式は、3つまで。
パワーポイントで1つずつ出していくやり方もよい。
11:19 余白をうまく使う。
プロジェクターとスクリーンの相性もあるので、端が切れることがある。スライドいっぱいに作らず、スライドの端に余白を作っておくのがよい。
12:20 それぞれのスライドに簡単なイメージ(模式図)を置く。
タイトルとビジュアルなイメージが一致していると効果的。
霊長類(ヒト)は、視覚的な動物なのです。
次回に続く。