日本語の文章では、よく「起承転結」というのが良い文章だとされています。ところが、英語の文章、特に米国の文章では、例えば起承転結を使う朝日新聞の天声人語なんていうのは「悪文」の典型であると判断されると聞いたことがあります。「起」として、余分な前口上は必要なし。まして、話とは無関係の「転」なんて要らない。そんなものは削ってしまえ、ということなのでしょう。
こういう米国流の文章の書き方を端的にまとめたのが、UCLAの Richard A. Lanham 名誉教授が提案した「The Paramedic Method」というものでしょう。つまり、パラメディックのように、文章をその場で治療してみるという方法論です。このメソッドは、この本の中で説明されています。
Revising Prose (5th Edition) Richard A. Lanham
Publisher: Pearson; 5 edition (July 20, 2006)
ISBN-10: 0321441699
ISBN-13: 978-0321441690
この方法については、エッセイやサイエンス・ライティングを含めて、米国では広く教育されているようで、YouTubeで短い説明がありますし、Googleで「Paramedic method」を検索すれば、多数の教材を目にすることができます。
この方法を、日本人にもわかりやすいように、まとめると、
1. 前置詞(of, in, about, for , onto, intoなど)を丸で囲む。2. be動詞(is, are, have been, was, were)を箱で囲む。3. 行為(action)が何であるか、考える。4. 行為をかんたんな動詞にする。5. シテ(doer)を主語にする。6. 前口上のような不要で言いたいことをぼかすような部分を取り除く。7. 同じことを言っているような冗長な部分を取り除く。
Lanham氏の本ででてくる適用例。
元の文章
In response to the issue of equality for educational and occupational mobility, it is my belief that a system of inequality exists in the school system.
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In response to the issue of equality for educational and occupational mobility, it is my belief that a system of inequality exists in the school system.
(前置詞は赤で、be動詞は青で示しました)
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修正後
I believe that gender inequality exists in the schools.
ずいぶんすっきりとしました。でも、米国のやり方では、こうやって、細かなところを削ってしまうから、科学的に厳密で重要な情報も失われてしまうのでしょうね。ライティングとして、メッセージを伝えるのには良いのかもしれませんが。。
科学論文として、こういう教育を受けてきた米国人が読むと、Paramedicメソッドを使っておけば、読みやすいということになるのでしょう。