わがまま科学者の英語講座

科学系の英語だけでなく、広く「英語」についての話題

プレゼンテーション(その3)スタンフォード・マコーネル方式2

スライドによるプレゼンテーションの方法を、具体的に指南するスタンフォード大学のマコーネル教授の「Designing effective scientific presentations」。 前回の続きです。

  

 

13:51  以前は、スライドの枚数は「1枚1分ルール」が基本だった。

ただ、パワーポイントの時代になって、このルールは変わってきている。

むしろ実際に練習してみるのがよい。

 

私の体験談です。かなり昔ですが、化学浸透圧説を提唱したピーター・ミッチェル氏(1978年ノーベル化学賞、英国人)の1時間くらいの講演を聞いたことがありました。1時間の間に、わずか2,3枚のスライドを使っただけでした。話も理論的なもので眠たくなったものです。逆に、1時間に200枚くらいのスライドを見せようとする野心的な研究者もいました。これくらいになると、話に着いていけなくなる。

更に、学会の公式の講演で60分の講演だというのに、90分くらい話している人もいたりしました。しかも毎回。非公式なセミナーならわかりますが、公式の学会でこれはかなり問題だと思いました。でも、とても偉い先生でしたので、座長も止めるわけにもいかず困惑しているようでした。こういう極端な講演は、結構記憶に残ることも確かなのですが。。こういう変な研究者というのが日本には多かった。最近は知りませんが。。米国では見かけたことがありません。ハワード・ヒューズの掟でしょうか、時間が来ると、話の途中でも冷酷にストップさせるというビジネス感覚が強い科学文化の特徴なのでしょう。科学を楽しむという意味ではいろいろあってもよいと思うのですが。。

 

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14:57 複雑なスライドは避ける。

トークのなかで説明しないようなものは、徹底的に除去せよ。

 

余分な記号や複雑で長い名称などもスライドから除去する。

例えば、物質、遺伝子、解剖学的な構造など、長い名称のものがあります。スライドの中やトークで、繰り返しこの長い名称を使うのは、気が散るし、時間を浪費します。そして長い名称は科学の本質とは関係がない。こういう場合、略したりして、スライドには何度も書かない。トークでも繰り返さない。

 

スライドの切り替えは必要なら工夫するのもよいが、基本的には簡単に。

 

19:10 Minimal Essential Dataという考え方。

要らないものは徹底的に捨て、必要なものだけを残す。

実際に実験をしてデータを出す院生などですと、なかなかデータを捨てることができないとは思います。でも、実際に手を動かしてデータを出すわけではない教授やPIですと、院生が苦労して出したデータを容赦なく捨てることができるかもしれません。ですから、教授の話はわかりやすくなります。

 

 パワーポイント機能(アニメーション)をうまく利用して、うまく説明する。

 

25:19 よいトークの構造。

Big Questionから始める。広いイントロダクションから、トークの理解に必要な最小限の専門的なイントロダクションへ。そしてそれに答えて終える。

 

26:30 ホームスライドhome slideという概念。

トークの全体を統一する1つのテーマ、イメージを含んだ「ホームスライド」を作り、トークの中で何度も登場させ、話の切り替え時に、何を話しているのか、常に明確にする。

 

29:27 聴衆が集中できる時間を知る。

聴衆というのは人間です。TEDトークでは、18分ルールというのがあって、聴衆が集中できる18分というのを基本にしているそうです。そういえば、数年前、オバマ大統領が広島で行ったスピーチも17分強でした。15分でもなく、20分でもなく、18分というのが絶妙なルールです。

18 minutes | Search Results | TED

 

マコーネルさんは、この図を紹介しています。

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 この本からの引用らしいです。

 

100%の聴衆の集中力というのは期待できない。特に、20分から35分くらいのところで、多くの聴衆の集中力が著しく低下するということを認識することが大切です。確かに実体験でもそう感じます。

 

この問題を乗り越えるには、20-30分くらいのところで、データばかりを連続して出すのではなく、エピソード(小さな物語) を入れるなどして工夫する。

リクトマン教授のプレゼンのおきての最後にあったジョークを入れる時間として最適かもしれません。実際、頭の良すぎる研究者のトークを聞いていると、この点で失敗している人が多いです。

 

続く。